コロナは感染症というが伝染病とは言わない。
昔は,うつる病気に伝染病という言葉しか使っていなかったように思う。
しかし,現在はむしろ感染症という呼び方が主流だ。
これは多分に法律の文言の変更によるところが大きいようである。
約20年前に,それまで伝染病予防法と呼ばれていたものが感染症法という法律に変わり,条文に出てくる文言が伝染病から感染症に変更されている。
その後に改正された学校保健安全法という法律でも,インフルエンザをはじめとする学校伝染病が学校感染症と表現されている。
しからば,感染症でも伝染病でも同じとなりそうだが,少しだけそれぞれの言葉のもつニュアンスが違う。
感染症は病原体が生物の体内に侵入することに着目した用語であるのに対して,伝染病は特に生物から生物へとうつることに着目した用語だ。
一般に病気は直接的な原因(病因),病気になる生物(宿主)のコンディション,及びその周囲の環境という3つの発生要因が重なって生じる。
感染症についても,病因としての感染源,宿主としての個体の感受性,環境としての感染経路が発生要因となる。
個体の感受性というのは病原体の感染があったときに発症するかどうかという体の抵抗力のことだ。
感受性が高いという場合,抵抗力が弱いことを意味する。
感染症は感染源,個体の感受性,感染経路いずれかの発生要因をなくせば流行しなくなる。
感染源への対策は,感染源の消毒や除去,感染者の隔離,感染者の有無の検査などがある。
宿主の感受性への対策については,抵抗力を積極的につけるために予防接種を行ってその感染に特異的な免疫を獲得させたり(ワクチン),栄養や休養に注意して体力を維持しておくと発症を防いだり重症化しにくい。
感染経路への対策は,感染経路の消毒や遮断(都市封鎖,外出自粛など),媒介生物の駆除などがある。
特効薬やワクチンが開発されていない段階では,人と人とが物理的距離を置くフィジカルディスタンシングに頼ることになる(ちまたではソーシャルディスタンスといわれている)。
感染経路への対策といえよう。