新型コロナウイルスの感染予防のために外出自粛は重要な対策だ。
しかし、外出自粛により運動不足や過食が生じて太りすぎに悩む人たちも出てきている。
この肥満した状況は世に「コロナ太り」と呼ばれているようだ。
肥満は体脂肪の過剰沈着のことをいうので本来は体脂肪率を見ないといけないが、正確に知るのがなかなか難しいので、身長と体重の関係から判断されることが多い。
実際、肥満や痩せ(やせ)など体格を評価する指標として,体重Wと身長Hのべき乗HPの比(W/HP)をみた様々なものがある。
近年では体重W(kg)を身長H(m)の2乗で割り算するBMI(ボディ・マス・インデックス)がしばしば用いられる。
日本肥満学会の判定基準では,BMIが18.5以上,かつ,25未満の体格で普通,BMIが25以上の体格で肥満,18.5未満の体格で痩せと分類している。
コロナ太りと騒いでおられる方々は、これを目安に一喜一憂しているのであろう。
しかし、実際の体格が普通であるにもかかわらず多くの若い女性たちではさらに痩せたいという心理が働きやすい。
18歳から20歳までの女子大学生500人あまりを対象に実施した自分の体格についての意識調査では,自分の身長のもとで理想とする体重は自分の体重より平均で4.8kg低いところにあった。
自分の体重を評価させると,「普通」と回答したグループのBMIの平均値は18.8と痩せの領域に近かった。
「太っている」と回答したグループのBMIの平均値は21.8とごく普通の体重であった。
若い女性たちには自分の体格に対する認識に歪みがあり,太っていると思いこむ傾向が顕著にみられる。
経年的に文献をみると,やせ志向はその度をいっそう深めている。
上記の意識調査は西暦2000年頃に実施された結果なので、現在どうなのか知りたいところである。
時代や地域,あるいは人の好みによっても異なるが,現代の若い女性の大多数に細身の体格が美しい体格として認識されている。
脳下垂体前葉から分泌される卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンが増加して女子の思春期が発現し,体脂肪を増加させてふくよかな女性らしい体つきになっていくという自然の摂理に抗う意識である。
余談であるが、近代統計学の父とされているケトレーが最初にW/H2を計算して体格を評価したため(1835年),昔はBMIのことをケトレー指数と呼ぶ人もいた。
また,このケトレー指数を日本ではカウプ指数とよぶことが多かった。
カウプも人名であり,20世紀前半にミュンヘン大学で衛生学の教授をしていた人である。
1921年にカウプが発表した論文の中で,子どもの発育指標としてW/H2を用いるよう推奨している。
ケトレー指数やカウプ指数がBMIと呼ばれだしたのはミネソタ大学生理衛生学研究室のキースらが発表した1972年の論文からである。
キースらは指数が身長と相関が低く体脂肪と相関が高いことが望ましいという観点から検討した。
その結果,W/H2が優れた指数であることをしめすとともに,BMI(Body Mass Index)と名づけた。
BMIという呼び方は他の研究者に受け継がれ,肥満や痩せを判断する指標として用いられてきた。
世界的には1997年に世界保健機関(WHO)の「肥満の予防と治療に関する勧告」,日本では日本肥満学会が2000年に発表した「新しい肥満の判定と肥満症の診断基準」の中でBMIを用いて以来,BMIは指数としての確固たる地位を築いたようである。