シニアがブログでモノローグ

このままでは年を取って死ぬだけ。ブログでもやってみよう。

治験

コロナ禍の終息に向けて特効薬やワクチンの開発が待ち望まれているが、私たちのからだに大きく作用するだけに慎重さも求められる。

 

一般的に医薬品の開発には何年もの年月を要する。

薬効成分を発見したり合成したりする基礎研究からはじまり、動物実験などを経て、実際に人での安全性や有効性を確かめる臨床試験を行う。

この臨床試験のことを治験(ちけん)と呼んでいる。

 

治験は3段階に分かれている。

最初の段階は開発中の薬を健康な人に投与してみて安全性を中心に調べる。

2段階目は薬を少人数の患者に投与して有効性、副作用や薬の適切な使用方法を調べる。

そして、最後の段階で多数の患者に実際の治療に近い方法で薬を投与して安全性、有効性や副作用を調べる。

このときの試験方法としては、患者をランダムに2つのグループに分けて一方のグループには開発中の薬を、もう一方のグループには偽薬(ぎやく、みせかけの薬)を投与するような方法がとられる。

 

治験が適切に行われているかを見守ることは重要で、治験を実施する機関には一般的に治験審査委員会(Institutional Review Board、IRB委員会)と呼ばれる第三者的な立場の委員会を設置することが義務づけられている。

この委員会で被験者の人権が守られているか、安全性が確保されているか、科学的な妥当性が保証されているかなどが審査されている。

 

私の所属していた大学にも委員会があり、私も頼まれて参加していたことがある。

隔月くらいに開催されていたと思うが、毎回、事前に分厚い紙資料がバッグに入れられて事務方から各委員に送られてきた。

専門家の臨床医の委員を中心に議論する委員会であったので、議論を聞きつつも非専門家である私は臨床医にしかわからない会話に少しげんなりしていた。

 

委員を何とか一年間続けたが、統計の専門家を委員に入れた方がいいのではないかという勝手な理由をつけて、委員の交代を事務方に申し出た。

結局、数学の先生に交代してもらい、そのことを同じく退屈していたであろう非専門家の委員の一人に告げた。

 

しかし、その委員は実際に退屈していたものの委員を交代することはしなかった。

誰かと交代すると、その人も退屈するだろうというのだ。

私はその言葉を聞いて思わずハッとした。

そして自分の考えの至らなさを恥じた。

 

リタイアする数年前の出来事で私もいい年をしていたが・・・

私の人間修業はこれからも続く。