シニアがブログでモノローグ

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スポーツの秋

秋にスポーツというのはうなずける。

1964年の秋に開催された一回目の東京オリンピックの遺産だとする見方もあるが、その前から秋の風物詩として運動会を行っていたりしたので,東京オリンピックが「スポーツの秋」の由来というのは少し弱くないか。

 

しかし、何といっても秋の気候がスポーツをするのに適していることが「スポーツの秋」と言わしめている。

理科年表をめくると、東京の秋の気温平年値は10月が18℃、11月が13℃程度だ。

東京に限らず多くの地域で秋はスポーツをするのに適した温度環境だ。

ただし、4月、5月も秋と同じような気温だが、スポーツの春ということばはあまり聞かない。

プロ野球やサッカーのリーグ戦が始まる頃なのだが・・・

 

スポーツに限らず,私たちにとって最適な気温は至適(してき)温度と呼ばれる。

至適温度には本人の感覚に基づいた主観的至適温度,エネルギー消費量が最小で体温調節の努力も最小ですむ生理的至適温度,作業能率が最高になる生産的至適温度があり,それぞれの温度は異なる。

 

至適温度は画一的には決められず,いろいろな要因により変化する。

例えば主観的至適温度についてみると,夏は冬より幾分高い温度になる。

体温調節が未完成な乳児や代謝機能が低下した老人では,高めの温度を好む。

暖房設備が普及するにつれて冬季の主観的至適温度が高くなるという時代影響もある。

その他,着衣量,人種差,性差なども至適温度に影響している。

 

そんなことを言っても,具体的に至適温度はどれくらいなんだ,と思ってしまうだろう。

例として,安静にしているときの平均的な主観的至適温度を示そう。

日本人で20℃,アメリカ人で22℃,イギリス人で18℃という調査結果がある。

およそのところ,私たちの好む気温は20℃くらいということになる。

 

スポーツをする場合は,身体運動そのものが発熱作用をもたらすので,安静にしているときよりも低い温度が好まれる。

生理的至適温度や生産的至適温度の観点からは,マラソン競技などで気温が20℃というのは至適温度からほど遠い。

気温が高すぎて好記録は望めない。

 

アスリートの適応能力にも限界がある。

気温が高すぎてうまく適応できないといろいろな障害があらわれる。

暑さによる障害が,まとめて熱中症と呼ばれるのはご存知であろう。

さまざまな症状があるが,発汗して水分と塩分が失われたときに水分のみを補給していると細胞外液の塩分濃度が低下して神経が不規則に興奮するために筋が痙攣(けいれん)する。

 

発汗による脱水で血液の粘性が増加して血管抵抗が大きくなり,放熱のために皮膚血管が拡張して静脈還流(心臓に戻ってくる血液)が減少し,一回拍出量は減少して心拍数は増加する。

心臓に負担がかかってしまって循環障害が生じる。

そのため,血圧の低下,めまい,脱力感,頭痛などで疲労し,意識を失ってしまうこともある。

 

熱中症のうちでも最も危険な状態になると発汗の停止,高体温,全身痙攣,虚脱,昏睡といった症状が現れる。

体温調節の失調で体温は急上昇し,致命率は高い。

 

スポーツの最大の祭典であるオリンピックを真夏に開催するという時点で,アスリート・ファーストの精神は主催者の頭の中にないことがわかる。