学術雑誌に掲載される論文は、その原稿が著者から雑誌の編集者へ投稿されたときに吟味(査読)される。
論文として掲載に値するか、修正すべきところはないかなど、同じ分野の専門家が審査している。
ときどき査読の依頼を受けてきたが、投稿原稿の採否や修正箇所を提示するほかに、私自身の利益相反(competing interest とか conflict of interest という)の有無を編集者に知らせなければならない。
この利益相反という語句は法律用語としては昔からあったようだが、研究の分野では今世紀に入ってから目にするようになった。
利益相反?
どういうことかわかりにくい語句ではある。
当事者間で利益が相反することと辞書にある。
片方に利益があり、もう片方は不利益をこうむるということだが、研究の分野で利益相反を尋ねられても正直なところ最初は何のことわからなかった。
利益相反の意味をグーグル検索してみると、ウェブスターの辞典にconflict of interestについて以下のような説明があると教えられた。
a conflict between the private interests and the responsibilities of a person in a position of trust
「信用される立場にある人の私的な利益と責任との対立」と説明されている。
こっちの方が実際の意味としてわかりやすいと思う。
このことを研究の分野にあてはめると、利益相反とは「研究者として得る利益と社会的責任とが対立し,研究者としての様々な活動が疑われる可能性のある状態」ということになる。
例えば、企業から資金提供を受けて行った研究が、公正であるべき研究者としての社会的責任を曲げてその企業に都合のよい研究結果にしているのではないかと疑われる可能性がある状態が利益相反だ。
したがって、研究したりその結果を発表したりするときには利益相反の可能性がないか、あるとすればそれをどのようにマネジメントして防いでいるのかを明らかにしておくことが望ましい。
研究結果が論文として学術雑誌に投稿されてきたとき、今度は、それを審査する者も論文に関連する企業とのつながりなど利益相反があるかどうかを申告することになる。
それにしても、利益相反ということばはわかりにくくないか。
利害関係とでもいった方がもう少しわかりやすいと思うのだが。