シニアがブログでモノローグ

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脱共役たんぱく質?知らなかった

前回のブログで酸化的リン酸化について記した。

ミトコンドリア内で水素原子が電子を放出する酸化反応とともにATPの合成反応が生じるというように,複数の反応が組み合わさって生じることを共役反応という。

酸化的リン酸化は代表的な共役反応だ。

このような共役反応を生じさせないようにするのが脱共役で,通常この用語は酸化的リン酸化を阻害する場合に用いる。

 

1985年、この脱共役の機能を持ったたんぱく質(UCP1)が褐色脂肪組織のミトコンドリアの内膜に存在することが確認された。

脱共役たんぱく質は、水素イオンがミトコンドリアの内膜を通過する際に出てくるエネルギーをATPの合成に利用せず、熱に変えることで消費する。

同じような仲間のたんぱく質が白色脂肪組織や筋組織でも1997年に確認されている。

現在では脱共役たんぱく質の持つ発熱の機能が寒冷適応や肥満治療などいろいろな観点から注目されている。

 

今を去ること約50年前,当然,私たちは脱共役たんぱく質とか知らなかった。

非ふるえ熱産生に貢献する褐色脂肪組織が新生児には認められるが成人になると消失してしまうと思われていた。

およそ成人の脂肪組織は代謝的に不活性な組織とみなされていた。

 

それでも,何となく私たちの脂肪組織が単に毛布の役割をしているだけでなく,電気毛布的な存在であるようには感じていた。

事実,故人になられたが長崎大学の中村正教授(衛生学)や熊本大学佐々木隆教授(生理学)が人体の脂肪組織とそれ以外の組織(除脂肪組織)の代謝活性を調べていた。

 

当時の私も若輩ながら両教授の論文に感化されて人体の脂肪組織と除脂肪組織の代謝活性について計算を試みたことがある。

人体全体の代謝量をM,脂肪組織の代謝活性とその量をそれぞれpとA,除脂肪組織の代謝活性とその量をそれぞれqとBとすると関係式は以下のように表される。
M=pA+qB
上式のM,A,Bを実際に測定して最小二乗法により脂肪組織の代謝活性(p)と除脂肪組織の代謝活性(q)を求めようというわけである。

 

こうして基礎代謝での代謝活性を算出すると,脂肪組織では0.46kcal/kg/hr,除脂肪組織では1.18kcal/kg/hrとなった。

しかし,寒冷暴露(90分間,気温13℃)したときの代謝活性を調べると,脂肪組織では1.48kcal/kg/hr,除脂肪組織では1.42kcal/kg/hrとなった。

寒冷環境において脂肪組織の代謝活性が除脂肪組織のそれと同程度に大きくなるという結果が得られはしたものの,あまりにも大きくなり過ぎじゃないかと感じていた。

 

脂肪組織での脱共役たんぱく質の存在を知り,私の計算結果も大きくずれてはいないように思い直しているのだが。

そのうち,研究の最前線にいる若い方々に正確なところを教えていただこう。