外来語のカタカナ表記はよくあるが、英語そのままで書かれたSociety 5.0ということばをときどき目にする。
最初は一瞬、パソコンのアプリか何かでバージョンが5.0かと思ったが、違う。
しかも、これが日本政府がひねり出したものとなると一体何だろうと思う。
内閣府は2016年に第5期科学技術基本計画を立て、その中でSociety 5.0の社会を創出するという政策を打ち出している。
AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、ロボット、ビッグデータ利用といった先端技術を活用して、私たちの暮らしを快適にするとともに社会的課題を解決できる5番目の社会にしたいらしい。
何で5番目の社会か。
内閣府はこれまでの人類がたどってきた歴史から、狩猟社会を1番目(Society1.0)、農耕社会を2番目(Society2.0)、工業社会を3番目(Society3.0)、情報社会を4番目(Society4.0)の社会と位置づけている。
そして、これから目指さなければならない社会がSociety5.0だという。
具体的なSociety5.0の中身について発信元である内閣府のホームページを閲覧してみた。
読み進んでいくと、次のような一節がある。
我が国は、先端技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れ、イノベーションから新たな価値が創造されることにより、誰もが快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる人間中心の社会「Society 5.0」を世界に先駆けて実現していきます。
この手の文章はわかったようでわからないようなものが多いが、人間中心の社会がSociety5.0だという。
人間中心というと聞き心地はいいが、どうしてそう言えるのか、もう少し詳しく知りたいところではある。
人間(人類)の歴史は長い。
時間感覚をわかりやすくするために時間軸を身近なものに置き換えてみよう。
人類の歴史は700万年といわれているが、現代までを1年間のカレンダーにしてみる。
元日の午前0時が人類誕生、1年たったその年の大みそかの夜、新年になる直前が現代ということになる。
私たち現生人類は20万年前に出現したといわれているが、その日はカレンダーでいうと年の瀬も押し詰まった12月20日になってからだ。
内閣府のいう農耕社会(Society2.0)が始まったのはおよそ1万年前だから、カレンダーでいうと大みそかのお昼頃だ。
その後に続く工業社会(Scociety3.0)や情報社会(Society4.0)は極めて短時間に過ぎない。
私たちの身体は、カレンダーでいうと大みそかの昼前まで長い期間続いた狩猟社会(Society1.0)で進化してきた。
現代の人間の生物学的特性は狩猟社会で育まれたものを受け継いでいる。
先端技術の活用を前面に打ち出すのもいいが、人間の本性を十分に踏まえた人間中心の社会(Society5.0)になってほしい。