とある大新聞社が東京オリンピック閉会式の日とその前日に全国世論調査を実施している。
本気かどうかわからないが,5月に社説で東京オリンピック開催の中止を総理大臣に求めた新聞社だ。
今回の世論調査はいつもと同じような内閣支持率のほか,開催された東京オリンピックについての感想を聞いている。
その最初の質問が,「東京オリンピックを開催したことは,よかったと思いますか。」だ。
その回答は,「よかった」が56%,「よくなかった」が32%だった。
このような結果を知らされると,政府がオリンピックを強行開催したことが国民から受容されたと感じる人がいるだろうが,果たしてそうなのか。
質問による調査の限界でもあるが,質問の仕方によって回答は影響を受ける。
「東京オリンピックを開催したことは,よかったと思いますか。」という質問は曖昧だ。
前回のブログでも記したように,コロナ禍でのオリンピック開催の是非とオリンピックを見ての感想とをごちゃ混ぜにした質問になっている。
外出を自粛している中で,テレビでのオリンピック観戦は好都合な余暇の過ごし方になっただろう。
オリンピック憲章もどこへやら,今やゲームは国家間の戦いの感がある。
テレビを通じて見る者を一喜一憂させ,感動させる魔力がオリンピックにはある。
自国の選手の金メダル獲得数が増えていくほどに応援は盛り上がる。
「東京オリンピックを開催したことは,よかったと思いますか。」という質問は「東京オリンピックは面白かったですか。」と質問しているようなものだ。
多くの人が「よかった」と答えるのは目に見えている。
オリンピックを強行開催した者たちは、今回の調査結果を大いに利用するに違いない。
人々を熱狂させるようなオリンピックを命と健康が脅かされている中で開催してよかったのかということにまで思いをはせて回答した結果を知りたい。
そして、それ以上に知っておきたいのは時の政権がオリンピックに限らず、いざとなったら国民の意向を無視して物事を進めることがあるということだろう。