ボーっとしていたらチコちゃんに叱られそうだが、いつの間にか節分や立春も過ぎてしまった。
いまだに北国は大雪で大変そうだが、春はすぐそこまでやって来ている。
私も長い間、北国で過ごした経験がある。
2月の上旬になると日が少し長くなり、日射しも弱いながら温かみを増してくる。
季節を分ける節分とはよくいったものだ。
冬から春へ移り変わろうとする気配を南国よりも強く感じた。
初めて北国で生活を始めたときは、現地のおばあさんから「冬が越せるかねえ」と緊張感のあるお言葉をいただいた。
北国の冬がどんなものか想像がつかなかった。
その冬を実際に私が経験して,印象に残っているものを以下に記しておこう。
よかったものとしては、冬期の間、寒冷地手当なるものが支給された。
給料の月額とまではいかないが、それなりの手当をいただいた。
暖房費などの出費に対応するものだった。
やがて、公務員の優遇が問題となる世の中になって大幅に減額されてしまったが。
寒さを実感したことは幾つかある(北国の方にとってはいつものことで面白くもないでしょうが)。
朝方、出勤して車を駐車するときはワイパーを立てておいた方がよい。
そうしないと夜、家に戻るときにワイパーがフロントガラスに凍りついている。
夜間はいっそう気温が下がるので、家から追い出されたり戸外で酔いつぶれたら間違いなく凍死しそうだ。
雪が降っても溶けてくれるといいが、残って積もりだすと身のまわりが冷蔵庫のように思えてくる。
積雪は車や人通りで踏まれると固まって氷になる。
氷になると、その上を歩くのは至難の業で、いくら注意しても転びそうになる。
転んで骨折した人の話をときどき聞いた。
どうしても氷の上を歩かないといけないとき、私なりに悟ったことがある。
それは、転ぶまいと力まないこと、というか、滑ることを楽しみながら余裕をもって歩くことだ。
スケーティングリンクに乗ったような気持ちでわざと靴底を滑らせたりする。
逆に、滑らないようにと思って歩き出すと力が入り、疲れて途中で身動きがとれなくなる。
家の周囲に積もった雪は自分たちで除雪しないといけない。
幸いに宿舎に住んでいたので除雪する場所は通路だけでよかったが、当番制だった。
当番は早起きして除雪したが、当番の個性が出た。
当番を気にしないで除雪しない人、当番が出張と重なって交代を頼む人、アルバイトを
雇う人(附属病院長)など。
除雪の仕方にも個性が出た。
南国育ちの私は雪が残らないよう徹底的に除雪した。
北国育ちの人は、またすぐに積もるのだからと歩きやすい程度に除雪した。
怖かったのは、吹雪の中をスキー場や空港など郊外へ車で出かけたときだった。
いわゆるホワイトアウトになったことがある。
吹雪で車の外の景色は真っ白,何も見えない。
他の車も走っているので停車するわけにはいかない。
追突したり追突されたりしないかと思いながら、徐行するしかなかった。
北国の春はもうすぐだ。