通っているボイストレーニングの教室の先生は、たびたび翻訳唱歌について歌詞を和訳してみないかと私に勧めてくる。
きっかけは、唱歌「庭の千草」の原曲を訳詞して先生に手渡したこと。
(本ブログ2025年11月25日「The Last Rose of Summer(「庭の千草」の原曲)和訳」参照)
先生は私の訳詞を気に入ってくれて、以来、ことあるごとにいろいろな翻訳唱歌の原曲を訳詞してみないかという。
なるべく他の生徒から浮かないように、歌っている歌詞の説明を先生がし始めたときはうつむいてじっとしているのだが、顔を上げると先生は私の方を見ている。
結局、逃れられずに原曲を訳詞することになる。
今までに訳詞してみた原曲は「庭の千草」のほか「五月の歌」、「主人は冷たい土の中に」、「故郷を離るる歌」、「故郷の空」。
今はAIがあるので訳詞は簡単だが、最終的には自分で辞書を引きながら和訳する。
訳してみると、原曲の歌詞に忠実な訳詞もあれば、歌詞を創作しているものもあることがよくわかる。
ということで、今回、訳詞しなければならないのは「埴生(はにゅう)の宿」。
私たちが昔から歌ってきた歌詞は以下の通り。
♫
埴生の宿も わが宿
玉のよそい うらやまじ
のどかなりや 春のそら
花はあるじ 鳥は友
おお わが宿よ たのしとも たのもしや
ふみよむ窓も わが窓
瑠璃の床も うらやまじ
きよらなりや 秋の夜半(よわ)
月はあるじ むしは友
おお わが窓よ たのしとも たのもしや
♫
原曲の歌詞は以下の通り、曲名はHome, Sweet Home。
'Mid pleasures and palaces though we may roam,
Be it ever so humble, there's no place like home.
A charm from the skies seems to hallow us there,
Which, seek thro' the world, is ne'er met with elsewhere.
Home, home, sweet, sweet home,
There's no place like home,
There's no place like home.
An exile from home splendour dazzles in vain
Oh, give me my lowly thatch'd cottage again!
The birds singing gaily that came at my call
Give me them with the peace of mind dearer than all.
Home, home, sweet, sweet home,
There's no place like home,
There's no place like home.
古語が含まれたりしているので標準英語にすると
Amid pleasures and palaces though we may roam,
Be it ever so humble, there's no place like home.
A charm from the skies seems to hallow us there,
Which, search through the world, is never met with elsewhere.
Home, home, sweet, sweet home,
There's no place like home,
There's no place like home.
An exile from home, splendor dazzles in vain.
Oh, give me my lowly thatched cottage again!
The birds singing gaily that came at my call,
Give me them with the peace of mind dearer than all.
Home, home, sweet, sweet home,
There's no place like home,
There's no place like home.
AIに和訳してもらうと以下の通り。
どんなに楽しい場所や宮殿を訪ね歩こうとも、
どんなに質素な家であっても、我が家にまさる場所はない。
そこには、天から授かった不思議な魅力があり、
世界中を探し回っても、ほかのどこにも見いだせない。
我が家よ、我が家よ、愛しき我が家よ。
我が家にまさる場所はない。
我が家にまさる場所はない。
故郷を離れた者には、どんな華やかさもむなしく目を奪うばかり。
ああ、もう一度、あの質素な茅葺きの家に帰りたい!
私が呼べば楽しげに歌ってくれた鳥たちよ、
何にもまして大切な心の安らぎとともに、あの鳥たちを返しておくれ。
我が家よ、我が家よ、愛しき我が家よ。
我が家にまさる場所はない。
我が家にまさる場所はない。
私の訳は以下の通り。
遊び興じる宮殿を渡り歩いても
今までが大変質素であったとしても 我が家よりいいところはない
天から受ける魔力はその場所を神聖なものとさせているように思われる
世界中を探しても他には見当たらない
我が家よ 我が家よ 素晴らしい 素晴らしい我が家よ
我が家ほどいいものはない
我が家ほどいいものはない
我が家を離れてみても華やかさが虚しく輝いているだけ
ああもう一度私に質素なわらぶきの家を与えてください
私が呼べばやってくる鳥たちは陽気に歌う
何よりも大切な心のやすらぎとともに鳥たちをよこしてください
我が家よ 我が家よ 素晴らしい 素晴らしい我が家よ
我が家ほどいいものはない
我が家ほどいいものはない
こうして和訳してみると、原曲Home, Sweet Homeの歌詞も「埴生の宿」の歌詞も我が家が一番という根幹の部分は一緒。
キリスト教風の原曲の歌詞を、「埴生の宿」では花鳥風月の和風に変えている。
訳詞した里見義(ただし)の手腕も素晴らしい。