通っているボイストレーニングの教室でモーツァルト作曲「五月の歌」を歌う。
歌うといっても,発声練習のために使うくらいだが。
この歌は戦後間もない頃,青柳善吾の作詞で小学校の音楽教科書に掲載されたもの。
歌詞は以下の通り。
楽しや五月 草木はもえ
小川の岸に すみれにおう
やさしき花を 見つつ行けば
心もかろし そぞろあるき
うれしや五月 日影ははえ
わか葉の森に 小鳥歌う
そよ風わたる 木かげ行けば
心もすずし そぞろあるき
ただし,原曲の歌詞はドイツの詩人クリスチャン・アドルフ・オーバーベックの詩集から採用されていて,曲名は「春への憧れ」。
青柳の「五月の歌」の歌詞とは趣が少し異なる。
原曲はドイツリートなので,ひとまず人工知能(ChatGPT)の力を借りて歌詞をそっくり英語に変換すると以下の通り。
Longing for Spring
Come, dear May, and make the trees green again,
and let the little violets bloom for me by the brook!
How I would so dearly love to see a violet again,
ah, dear May, how gladly I would go for a walk once more!
It is true that winter days also have many joys:
one can romp about in the snow and play many evening games,
build little houses out of cards, play blind man’s buff and forfeits,
and there are also sleigh rides out into the dear open countryside.
But when the birds sing and we then, happy and lively,
jump upon the green grass, that is another thing entirely!
Now my little hobby horse must stand there in the corner,
for outside in the little garden one cannot walk because of the mud.
Most of all, however, I pity little Lotte’s heartache;
the poor girl eagerly waits for the time of flowers.
In vain I bring her little games to pass the time;
she sits in her little chair like a chick in an egg.
Ah, if only it were already milder and greener outside!
Come, dear May — we children are begging ever so much!
Oh come, and above all bring us many violets,
bring also many nightingales and beautiful cuckoos.
以下が,私の和訳(意訳した部分もある)。
待ち遠しい春
早く来てほしい,大好きな五月,木々をまた緑にし,
私のために小川のほとりに小さなスミレを咲かせてください
どんなにスミレを見たいと思うことか,
ああ,大好きな五月,また散歩に出られたらどんなに嬉しいことか
冬の毎日にたくさんの楽しみがあるのも本当です
雪の上で走り回り,夕べにはいろいろなゲームをして,
カードで家を作ったり,目隠し遊びや罰ゲームをしたり,
そして,そりに乗って慣れ親しんだ野原に出かけたりもします
でも,鳥が鳴いたり,私たちが元気に緑の草原の上を飛び跳ねたりするのは,まったく別なことです
今は,私の小さな馬のおもちゃも部屋の隅に立てかけられたまま,
なぜかというと,外の小さな庭はぬかるんでいて歩けないから
でも,何といってもロッテちゃんが胸を痛めているのが可哀そうです
その可哀そうな女の子は花の季節をとっても待ち望んでいるから
時が過ぎるのを待つためにゲームの道具を持って行ってあげても無駄なこと
その子は卵の殻の中にいるヒナのように小さな椅子に座ったまま
ああ,外が暖かくなって葉が緑色になっていたらいいのに
早く来てほしい,大好きな五月,私たち子どもは強く願っています
どうか来てください,何よりもまずたくさんのスミレを運んできて,
そして,たくさんのナイチンゲール(小夜啼鳥)と美しいカッコウも連れてきて
原曲の歌詞からもわかるように,モーツァルトは春を待ちわびる子どもたちの気持ちを作曲している。
青柳の作詞した曲「五月の歌」はただ五月の情景だけを取り上げて歌にしている。
小学校の音楽教科書ということを意識して簡潔に作詞したのかも知れない。
原曲に忠実なことを良しとするならば,春が早く来てほしいと願う子どもたちのはやる心情を作詞してもよかったのではなかろうか。