晩年を迎えると、自分史でも書いてみようかという人もいるだろう。
アルバム写真や親から聞かされたことに頼らないで、自分史の始まりとなる幼いころの記憶をたどると、何歳くらいまでさかのぼれるか。
幼稚園に通ってたとき(5歳頃)の記憶なら、容易にいくつか思い出せる。
しかし、それよりも前の記憶となると、記憶は乏しくなる。
おぼろげながらの記憶があっても、それが何歳頃かとなると、いっそうあやふやになる。
私の覚えている記憶の始まりは、姉(19歳上で今は亡き長姉)にだっこされて家の前で通行人を眺めていたという記憶だ。
何歳かは、わからない。
だっこされていたから、2~3歳の頃か。
いつ頃から記憶があるのかは、いろいろな調査で調べられている。
おおまかにいうと、3歳頃からの記憶があるという。
本人は、その記憶がもう少し遅い年齢での出来事のように思う傾向があるらしい。
記憶は大脳辺縁系(脳の奥)にある海馬が主役。
その細胞群がタツノオトシゴのような形なので海馬と名付けられている。
新しい記憶はまず海馬に蓄えられ、その後、整理された記憶は大脳皮質(脳の表面)に蓄えられる。
3歳くらいまでは、この海馬がまだ十分に発達していないので、それまでに経験した記憶は長く保持できない。
帰郷したりして幼いころの環境に出会うと、いろいろな記憶が湧き出てくる。
記憶の中のお世話になった大人たちは、もういない。
思わず感傷的になる。