シニアがブログでモノローグ

このままでは年を取って死ぬだけ。ブログでもやってみよう。

将棋の藤井さんは「平均への回帰」ということばを使った

将棋界は藤井さん人気で盛り上がっている。

若くしてプロになり、何連勝もしたり強豪の棋士を負かしたり、さぞかし強いのだろう。

最近は将棋界のタイトルを立て続けに2つ獲得している。

人工知能を駆使しながら将棋を研究しているので今度はどんな新手を指すのだろうと期待させたり,謙虚なふるまいであることも人気につながっていよう。

 

それだけではない。

十代でありながら、難しい言葉もいろいろ知っているようだ。

私が感心したのは、藤井さんが中学生から高校生になる頃であったか、今は好成績をおさめているが年を取れば普通の棋士になっていくだろうということを「平均への回帰」と表現したのだ。

 

恥ずかしながら私は「平均への回帰」という言葉を30歳頃に読んでいた論文の中に出てきた「regression to the mean」という語句で初めて知った。

統計学の分野ではよく知られている言葉で、歴史的には19世紀にイギリスの遺伝学,統計学や人類学の研究者であるフランシス・ゴルトンが初めて使用している。

進化論で有名なチャールズ・ダーウィンとはいとこ同士だ。

 

ゴルトンは多才な人だったようだが,身長の遺伝についても研究している。

その中で、親の身長がとても高いと成人した子の身長も高いが親ほどは高くなく、親の身長がとても低いと成人した子の身長も低いが親ほどに低くはないという傾向があることを見出した。

そして、成人した子の身長は平均的な身長に近づくこの現象を「平均への回帰」と呼んだ。 

 

「平均への回帰」は身長の遺伝のみでなく、森羅万象でしばしば観察される現象だ。

このことを頭に入れておかないと、つい誤った解釈をしてしまうことがある。

例えば、健康診断で血圧の高かった人たちに一定期間の減塩指導をして再び血圧を測定したときに血圧が低下していたとする。

そのときの血圧低下には減塩指導の効果のみでなく、「平均への回帰」の影響も考慮しなければならない。

最初に健康診断で血圧の高かった人たちの中には、たまたま血圧が高かった人が含まれているので、後日、測定した血圧は減塩指導にかかわらず低くなっている可能性がある。

減塩指導の効果の程度を「平均への回帰」抜きに語ると、解釈を誤ってしまうのである。

 

この場合、どうしたらいいか。

一般的に行われているのは、最初に健康診断で血圧の高かった人たちを2群に分けて、片方の群には減塩指導し、もう片方の群には何も指導しないようにする。

こうすることによって減塩指導をした群の血圧低下と何も指導しなかった群の血圧低下を比較しながら、減塩指導そのものの効果を調べればよい。

 

ちなみに、この場合の何も指導しなかった群のことを対照群とかコントロールという。

調査や実験で何かの影響を知りたいときには対照群を設定するのが常道だ。