私たちは社会で仕事をしていると,どれくらいのことをやり遂げているかを評価される。
大学で仕事をしている場合は,自己評価をはじめとして研究業績を示さないといけないことがしばしばある。
研究成果は論文にするので,その著者になっていれば根拠ある研究業績を示せることになる。
理系の研究では複数の人がかかわって実験や調査をするのが普通なので,いきおい著者は連名になる。
論文に共著者として名前を連ねていれば自分の研究業績として利用できる。
大学や研究所のポストを得たり研究費を獲得するためにも研究業績は大変重要だ。
論文の著者を連名にするときは,名前の順番にも配慮する。
およそ筆頭のファーストオーサーにはその論文作成にもっとも中心的な役割を果たした人物,末尾のラストオーサーにはそのグループの指導的立場にある人物を配置する。
そして,筆頭と末尾の著者の中間にそのグループでデータの収集や分析にかかわった者を貢献度や役職に配慮しながら共著者として入れ込む。
しかし,このような共著者を記す場合,本当はオーサーシップ(和訳しずらいが、著者としての資格基準)に従って決めなければならない。
「本当は」と書いたのは,まだオーサーシップに従う風潮が希薄なように思われるからだ。
オーサーシップを逸脱している共著者を指して,ギフトオーサー,ゲストオーサー,ゴーストオーサーということばもある。
研究に貢献していないのに諸事情から共著者になっているのがギフトオーサー。
研究に貢献していないが、論文の掲載されやすさを見込んでその研究分野で有名な人を共著者にしているのがゲストオーサー。
研究に貢献しているが意図的に共著者にしていないのがゴーストオーサー(資金提供して貢献しているが利益相反を疑われないようにしたいときなど)。
オーサーシップのあり方としてよく参考にされているのは医学雑誌編集者国際委員会(International Committee of Medical Journal Editors)の基準だ。
以下の4つをすべて満たさないと著者にしてはいけない。
1.アイデア、研究のデザイン、データ収集・分析・解釈に相当の貢献をした
2.論文を書き起こした、または重要な部分に修正を加えた
3.出版される論文原稿を最終的に承認した
4.研究のすべてに責任を負い、疑義が生じたときは調査して解決することに同意した
研究費の獲得や研究のマネジメントのみでは著者になれない。
これらの基準に厳密に従うと,私の若い頃の論文にも共著者として記されてよかったのかと思い当たるものがある。