師走に入って本格的な冬を迎え、随分と寒くなった。
今年はコロナの感染に加えてインフルエンザが流行するかもしれないので,いっそうの用心が必要とのこと。
「寒いから風邪やインフルエンザにかからないように。」という文言はよく聞くが、本当にそうなのか。
多くの人が文言通りのことを経験しているから実際にそうなのだろうが、どうしてそうなのか。
風邪やインフルエンザを引き起こすウイルスは低温、低湿度の環境を好み、冬に屋内の換気も不十分になって感染しやすくなるという説明はわかりやすい。
一方、寒くて身体が冷えて免疫機能が低下するという説明についてはどうなのか。
・・・・・。
どうも神経神話(2020年11月23日付のブログ「神経神話」をご覧あれ)と同じように、根拠の不明な言説らしい。
医療関係者のサイトには、この手の言説を紹介しているものが結構ある。
中には免疫力が3割程度低下すると具体的に指摘しているものさえある。
ところが、体温と免疫機能の関係について調べてみた人の話では、ちゃんとしたエビデンスのある論文は見つからないという。
私もネットで何かないかと調べかかったが、体温と免疫機能との関係を明確に記述している論文には行き当たらなかった。
ただ,次のような最近のニュースに出会ったので参考まで。
それはハーバード大学のブライヤー教授らの分子レベルの研究で,およそ次のような仕組みで寒さが影響するとのこと。
呼吸器系のウイルスの多くは鼻から体内に侵入する。
ウイルスを検知した鼻の粘膜の細胞は細胞外小胞という物質を放出する。
この細胞外小胞の表面にはウイルスを吸着する受容体があり,体内への侵入を防ごうとする。
細胞外小胞に含まれているマイクロRNA(感染細胞の細胞死を促すという)も増える。
しかし,寒い環境で過ごすと鼻の中の温度が低下し,細胞外小胞やマイクロRNAの数が大幅に減少することをブライヤー教授らは明らかにしている。
要するに,冷たい空気を吸うと鼻の細胞が冷やされて免疫機能が低下するということらしい。
いずれにしても,寒い環境ではマスクをして鼻まで隠し,鼻の中が冷えないようにしておくのがいいようだ。