相変わらず暑い日が続いている。
炎天下に外出すると、たちどころに汗が出てくる。
いやがられることの多い汗だが、からだが高体温にならないようにするためには欠せない。
体温調節は熱産生と熱放散のバランスの上に成り立っている。
熱産生は体内での化学反応によりもたらされる。
熱放散は蒸発,輻射(放射),対流,伝導という4つの物理現象で行われる。
体温が安定しているときは熱産生と熱放散が同程度になっているときだ。
夏の暑いときなど体温が上がりそうなとき、私たちのからだは発汗(蒸発)と皮膚血流の増加(伝導、対流、輻射)により熱を逃がしている。
ただし、気温が体温より高いときは伝導、対流、輻射が熱を体内に入れる働きをするので,熱放散の手段は発汗のみとなる。
汗にはNaClや尿素なども含まれているが、汗の99%以上は水分だ。
発汗により皮膚表面で水分が蒸発すると気化熱が奪われて熱放散が生じる。
高温に加えて多湿のときは汗が蒸発しにくいので体温が上がりやすい。
暑いときにかく汗は、皮膚の表層部にあるエクリン腺という汗腺から出る。
全身に数百万個の汗腺があるが、温熱刺激により実際に発汗するのは一部のエクリン腺だ。
これらの汗腺を能働汗腺という。
能働汗腺の数には民族差がみられ,南国の人々で多い。
汗の研究で有名な久野寧(くのやす)という大家が調べたものがあるが、全身の能働汗腺数は日本人で約230万個、ロシア人で約190万個、フィリピン人で約280万個であった。
日本人よりもフィリピン人の方がたくさん汗をかけて暑さに強そうだ。
また、久野の調査によると日本人の能働汗腺数はフィリピンに移住した人でも増えていなかったが、移住した人の二世では増えていた。
このことから、出生して生育するときの温熱環境が能働汗腺数を決定づけるといわれている。
暑さに強い子を育てるためには、なるべく冷房を使わない環境で育てた方が良さそうだ。
暑いときに汗をかくことを温熱性発汗というが,手掌(しゅしょう、手のひら)と足蹠(そくせき、足の裏)を除く体全体にみられる(発汗の普現性)。
ただし、身体表面の一部を圧迫するとその周辺の発汗が抑制され、離れた部位の発汗が促進されることがある。
右半身を圧迫すると左半身で発汗し、下半身を圧迫すると上半身で発汗するといった現象が観察されることから半側発汗と呼ばれている。
寝汗をかくような暑い夜は、身体を横にして寝るとシーツに接している半身は圧迫されて汗をかきにくいので都合が良い。