コロナの騒ぎが未だ収まらず,町にでかけるとあちらのお店でピッ,こちらのお店でピッと体温が測られる。
体温といっても,からだの部位によって異なる。
今,町で測られているのは額(ひたい)の表面温度が多い。
昔ながらの水銀体温計の場合,日本人はみんな脇にはさんで測る。
あくまでも脇の下の温度であって,腋窩温(えきかおん)という。
欧米人は水銀体温計を口にくわえて測る。
舌の裏側にはさむので,舌下温(ぜっかおん)という。
実験なんかでは,からだの内部の温度を知りたくて手軽に測りたいときは,直腸に温度計を挿入したりする。
この場合は柔らかいワイヤー状のセンサーを用いる。
つまり,同じ体温といっても,測る部位によって温度は少しづつ異なる。
私たちの平熱は約36.5℃(さんじゅうろくどごぶ)というが,あくまでも腋窩温が36.5℃ということで,からだの表面の温度だ。
からだの内部の温度はもっと高い。
私たちのからだの表面温度は,なぜ36.5℃くらいなのか?
諸説聞き及ぶが,あるカナダ人の生理学者は計算で36.5℃くらいが望ましいことを導き出した。
人類は平均気温が25℃くらいの所で進化してきたということで,そのような環境にふさわしい体温があると考えてX℃とした。
私たちは恒温動物であるから,熱産生と熱放散のバランスをとって体温が大きく変化しないように調節している。
熱放散の大きさは環境温度と体温の温度差であらわすことができ,x-25となる。
体温が1℃上がったとき,熱放散が高まる程度は,(X+1-25)/(X-25)とあらわせる。
一方,体温が1℃上昇すると熱産生も高まる。
熱産生はからだの中の化学反応によるものであり,体温が上がると化学反応の速度も速くなるからだ。
温度が10℃上がったときに化学反応の速度が何倍になるかを温度係数(Q10)という。
Q10=2.3とすると,温度が1℃上がったときはその10乗根で1.087になる。
つまり,体温が1℃上がったとき,熱産生が高まる程度が1.087ということだ。
体温を一定に保つためには,熱放散と熱産生の高まる程度が等しければいいから,(X+1-25)/(X-25)=1.087
これをXについて解くと,X≒36.5℃ということになる。
私たちは,進化してきた環境気温のもとで体温調節をするのにふさわしい体温を身につけたようだ。