前回のブログで記したが、和音はなぜ心地よいのか。
不思議に思う。
もともと聴覚器官は聴の字にも示されているような能動的に音を「聴く」器官ではなく、受動的に耳に入ってくる音を「聞く」器官として進化してきたという。
私たちには味覚、触覚、嗅覚、聴覚、視覚という五感があるが、それぞれは危険な食物や外敵から身を守るための備えでもある。
その中で、聴覚は忍び寄ろうとする外敵 が出す音を「聞く」重要な感覚だ。
暗闇で野獣がガサゴソする音が聞こえなければ、すぐに野獣の餌食になってしまうだろう。
このように周囲で発生する音を聞きとるために進化したと考えられる聴覚の特徴が、和音に対する感覚に関係してはいないだろうか。
聴覚器官の入り口は耳。
外耳から入った音は鼓膜を振動させ、鼓膜に接する耳小骨で増幅して内耳の蝸牛の内側を満たしているリンパ液に伝えられる。
リンパ液の中を振動して進む音は蝸牛の基底板にたくさん並んでいる有毛細胞の毛を揺らして電気信号を発生させる。
電気信号は大脳の聴覚野に送られ、音を認識する。
有毛細胞は、和音のように倍音で構成されて同期性や周期性のある音をわかりやすい音としてとらえることができる。
何かわけのわからない不規則で不気味な音とは違う。
わかりやすくてとらえやすい和音に、私たちは安心するのではないか。
経験上、少なくとも身に迫った危険な事態で発せられる音ではないと。
そのような安心できる音は、心地よい音でもある。
進化を受け継いだ現代人も和音が心地よいと感じることの一つの説明になるのではないか。