様々な入試があるが大学入試は今、本番を迎えているところが多いだろう。
全国一斉に行われる大学入試共通テスト(昨年まで大学入試センター試験)は例年1月中旬に実施されるが、各国立大学の個別入試はこれから始まる。
リタイアするまで、この時期は入試の監督をやらされてきた。
全国規模の大学入試センター試験では、分厚い監督要領の冊子を渡されていた。
若い先生の方が受験生への指示事項を忘れないで的確に監督できそうなのだが、年長者がいつも監督責任者になっていた。
監督責任者は、決められた時刻に監督要領の冊子に書かれている受験生への指示事項を読み上げないといけなかった。
入試監督でのミスは許されないので神経を使った。
監督する科目が英語のリスニングだったりすると悲劇だ。
受験生への指示事項が他の科目の倍以上あったような気がする。
リスニング用の器械を受験生に渡して操作方法を教えたり、不具合がないか確認したりしないといけない。
もっと他にやり方はないのかと思っていた。
入試会場で問題や解答用紙を配布するときは、受験生が会釈してくれた。
監督者に愛想よくしても仕様がないのにと感じながらも、純真な受験生の気持ちが伝わってきた。
各大学が実施する個別入試では、科目試験のほかに実技試験や面接などをやるところもある。
実技試験や面接では、監督者が採点者を兼ねていることが多い。
実技試験や面接を点数化したときの客観性について疑問が湧き上がるときもあったが、それでは物事が進まない。
妥当性や信頼性に配慮しながら点数化していた。
実技試験は採点者がその道の専門家だからこそ見えるものがあって点数化できるのだろう。
しかし、その場合でも受験生の能力を5段階評価くらいまでしか細分できないのではなかろうか。
面接の点数化についてはどうか。
例えば、面接の評価項目としてよく取り上げられるのが志望動機だ。
「どうしてここを受験しようと思いましたか?」という質問を予想していて、立て板に水のように模範回答する受験生がいるが、採点者側にいる私としては複雑な気持ちだった。
志望動機を真剣に考えながら不器用に回答する受験生の方に魅力を感じていたからだ。
点数化するときは、きっと模範解答する受験生の方に高い点がつけられるだろう。
短時間の対面で学習意欲や知識を点数化しなければならない。
採点に参加していながら、割り切れないものがあった。
面接の点数化は慎重になるべきだ。
採点者側は面接で細かに点数化できるほどの眼力を本当に持ち合わせているだろうか。
振り返ってみて、私は自分がつけた点数にどれくらい責任を感じていただろうか。
ときどき、わずかな点差で合否がわかれることがある。