シニアがブログでモノローグ

このままでは年を取って死ぬだけ。ブログでもやってみよう。

飽和潜水

今月初めに自衛隊のヘリコプターが墜落した。

しばらく行方不明だったが,先日,約100mの深さの海底に沈んでいるのが発見された。

海中を捜索するための「飽和潜水」という言葉をしばしばニュースの中で聞いて思い出したことがある。

 

大学の研究生だった頃,横須賀にある海洋科学技術の研究所に短期間ではあるがお邪魔した。

深海で作業するための技術を開発する潜水シミュレーション実験(大陸棚を念頭に水深200m前後をシミュレートしていたと記憶している)のお手伝いだった。

地上にある実験用タンクに被験者を入れて高圧環境にし,飽和潜水の状態を創り出してデータを収集した。

 

飽和潜水というのは深海で作業するときに用いられる手法。

水深が深くなるとガスボンベで呼吸する空気の圧力も高くなる。

ところが私たちのまわりにある空気の中には8割近く窒素が含まれているので,圧力の高い窒素が吸われて体の中に溶け込むと酒に酔ったような症状が現れる(窒素酔い)。

したがって、水深が深いところでは窒素をヘリウムに置き換えて酸素との混合気体を呼吸ガスにする。

潜水する前に比較的安全な海上でタンクの中に入って潜水深度まで気圧を高め,体の中に飽和するまで呼吸ガスを溶け込ませるので飽和潜水と呼ばれている。

タンクの中で同じ気圧の水中エレベーターに乗り移って潜水する。

 

特に気をつけないといけないのは,作業を終えてタンクから出てくるとき。

気圧が急に下がって体の中に溶け込んでいたガスが気泡になったりしないよう、何日間もの時間をかけてタンクの中の気圧を常圧(1気圧)に戻さなければならない。

 

今回の自衛隊のヘリコプター墜落事故では一週間以上たって行方不明機と乗員が海中で発見された。

海中の捜索も水深が深くなると難しくなる。