都会で暮らしているので,街に出ると人の多さに辟易することがある。
田舎に生まれて幼少期を過ごし,現役で働いていた頃は地方の小都市に長く暮らしていたせいか,人は少ない方が落ち着く。
人であふれかえる都会ではあるが,日本全体でみると人口は着々と減りつつある。
今月に入って厚生労働省は昨年(2022年)一年間の人口動態統計月報年計(概数)を発表した。
出生数は770747人,死亡数は1568961人。
77万人生まれて157万人死んだのだから,昨年一年間に日本の人口は約80万人減少したことになる。
日本の人口は1960年代の後半に1億人を超えたが,2008年の約1億2800万人をピークに減り始めている。
総務省の概算によると,先月5月1日現在の人口は1億2450万人。
最近の人口問題研究所の推計によると、2050年代に1億人を割るらしい。
2070年には9000万人を割るということで、戦後の昭和20年代の人口にまで減りそうだ。
一人の女性が一生の間に産む平均的な子の数である合計特殊出生率の計算方法については昔のブログ(2021年2月15日付「男女平等」)に記しているが、産む子の数を女子に限り、母の死亡率も考慮して計算したものが純再生産率だ(詳しくは成書を)。
つまり、一人の女性が一生の間に産む女子の数である純再生産率が1人のときは世代を超えて出産を担う女性の数が維持されることになる。
近年の純再生産率は0.6人程度だから将来的に人口は減少していく。
ちなみに、合計特殊出生率を純再生産率で割ると人口の増減がない合計特殊出生率となり、これを人口置換水準という。
2022年の合計特殊出生率は1.26人だが、純再生産率を0.6人程度とすると人口置換水準は2.1人となる。
合計特殊出生率が2.1人程度だと人口が維持されるという意味だが、実際は1.26人しか産まないのだから人口は減少するはずだ。
人口の減少について、高齢社会であるがゆえに寿命がきて死亡数が増えるのは致し方ないが、出生数が減少しているのはなぜか。
政府は育児の経済的負担が課題であるかのように画策しているが、もっと根本的なところで出生数を減少させる力が働いているのではないか。
少子化は、程度に違いはあるものの多くの先進国が経験している。
共通する要因として都市化の影響はないだろうか。
産業の進展、高速交通網の発達、情報化、人口の都市への集中、近代的な生活様式などの影響だ。
何百万年もの狩猟採集生活に別れを告げたばかりの私たちにとって、都市化された環境は私たちを惑わし、出産や育児を抑制するようなことになっていないか。
女性の社会進出による産むことからの離心、高学歴による晩婚化、核家族化による祖母のような育児者の不在、狭い住宅などが出生率低下に影響しているといわれているが、都市化によってもたらされるものと考えられまいか。
人口の都市への集中という都市化もそうだ。
人口密度が高まり、密度効果を生じていないか。
個体群密度が高まると生存競争が激しくなって個体数が減少する方向へ向かう生物の現象が人間にも生じていないか。
都市化された環境での「生き方」が無意識のうちに「生きにくさ」や「産みにくさ」につながって出生率低下に影響しているように感じられる。