前回のブログでスポーツの意義について思いを巡らせてみたが、すぐに思いつくものの一つに健康の維持増進があることを記した。
私のようなシニアにとって健康の維持増進は最大の関心事だ。
それでは、そのために具体的にどんなふうにスポーツをしたらいいのか。
以下ではスポーツを運動や身体活動ということばに置き換えている。
国民の健康や福祉を担当する厚生労働省は、健康の維持増進をはかる指針として「健康づくりのための身体活動基準」を示している。
ところが、これがまた専門家にしかわかりにくい基準だ。
どういうのかというと、
18~64歳は、3メッツ以上の強度の身体活動を毎日60分(23メッツ・時/週)。
運動習慣をもつようにするために、3メッツ以上の強度の運動を毎週60分(4メッツ・時/週)。
65歳以上は、強度を問わず身体活動を毎日40分(10メッツ・時/週)。
一般の方に、すぐにおわかりいただけるだろうか。
まず、メッツということば。
運動強度らしいということはわかっても、メッツの意味するところは調べないとわからない。
3メッツ以上の強度の運動とはどんな運動なのか、これも調べないとわからない。
身体活動の単位としてのメッツ・時/週 が一週間当たりの運動量であることをすぐに理解できるだろうか。
申し訳ないが、「健康づくりのための身体活動基準」が全国に広まっているとはあまり思わない。
厚生労働省はこれより前、平成元年(1989年)に健康であるために必要な運動を運動所要量ということばで示している。
健康であるために必要な栄養を栄養所要量というが、その運動版だ。
約30年前に発表されたものではあるが、別にこの運動所要量が否定されたわけでもなく、上記の「健康づくりのための身体活動基準」よりはわかりやすいと私は思っている。
運動所要量の基本的な考え方はこうだ。
健康維持には体力が必要 ⇒ 全身持久力を一定水準以上に維持することが必要 ⇒ 全身持久力は最大酸素摂取量で評価できる ⇒ 一定水準以上の最大酸素摂取量を維持できる運動量を運動所要量とする。
(最大酸素摂取量ということばが出てくるが、その人にどれくらい馬力があるかを見る指標。最大どれくらい酸素を体の中に取り込んでエネルギーを作り出せるかを調べる。)
以下に示すのが、健康であるために必要な運動所要量だ。
運動の種類、強度、持続時間、頻度が示されている。
運動の種類 ⇒ 全身持久性の運動(有酸素運動なら何でも)
強度 ⇒ 最大強度の半分(一定水準以上の最大酸素摂取量が維持される最低限の強度。乳酸が生成されにくい。きつくないので長続きする。効率的な脂質代謝。血圧が上がり過ぎない。)
持続時間 ⇒ 一回の運動は少なくとも10分以上続けて1日合計20分以上(心肺機能を十分に駆動させる。脂肪を燃焼させる。)
頻度 ⇒ 毎日が望ましい
上記の運動所要量でわかりにくいのは強度くらいだろう。
しかし,強度は心拍数(脈拍)を目安に簡単に推測できる。
およその話になるが、運動の強度と心拍数は下図のように直線関係にある。
私たちが安静にしているときの心拍数はおよそ70拍/分、最大強度の運動をしているときの心拍数はおよそ(210ー年齢)拍/分と推測することができる。
したがって、最大強度の半分の強度での目標心拍数は{(210ー年齢)ー 70 }/2+70となる。
例えば、60歳の人が最大強度の半分の強度で運動するときの目標心拍数は110拍/分と計算される。
この目標心拍数に近い運動すればよい。
手首の動脈や頸動脈に指をあてて心拍数を測れば、目標心拍数に近いかどうか確認できる。
(心拍数は一分間測り続けると大変なので、15秒間の心拍数を測って4倍するなどしてよい)。
結局、運動所要量は自分の目標心拍数になる運動を毎日20分以上すればよいということになる。
こっちの方がわかりやすいと思うのだが。
(注)本文中で最大心拍数=210ー年齢としているが、以下の理由による。
厚生労働省は、目標心拍数を20歳代で130拍/分,30歳代で125拍/分,40歳代で120拍/分,50歳代で115拍/分,60歳代で110拍/分としている。
安静時の心拍数を70拍としているので,想定している最大心拍数を逆算して求めると,20歳代で190拍/分,30歳代で180拍/分,40歳代で170拍/分,50歳代で160拍/分,60歳代で150拍/分になる。
これらから厚生労働省の研究班は最大心拍数=210-年齢と計算したとみなすことができる。